キモノ工芸辞典<き>
<黄八丈(きはちじょう)>
黄八丈は、東京都八丈島で作られている絹織物です。
黄色、樺色、黒色の3色を基調とし、島に自生している植物の草木染で、黄色は八丈刈安(コブナ草)、樺色はマダミ(タブの木)の樹皮、黒色は椎の木の樹皮と沼浸けで染められます。媒染に榊・椿の灰汁(あく)などを用いることで生まれる鮮やかな発色が特徴です。
年貢の代わりに幕府に納められていたり、江戸時代後期には人形浄瑠璃で「黄八丈」の衣装が採用され、後に歌舞伎として上演されて爆発的な人気を誇ったと言われています。
<京友禅>
8世紀頃から伝わる染色技法を能登国(現・石川県)で加賀染めを習った後、京都へ出た扇絵師の宮崎友禅斎が17世紀ごろに確立した手描き友禅が起源となっています。
京友禅は、異なる色がにじまないように模様の輪郭を糸目状に糊を置いていく、糸目友禅染という技法をベースに作られ、金糸銀糸などの糸を使った刺繍と金箔や絞りが施された華やかさや、内側から外側にかけて薄くする「ぼかし」が特徴です。
一般的に京友禅の作業は分業制となっていることが多く、それぞれの工程の職人が作業をして一枚の着物が完成されます。
<桐生織(きりゅうおり)>
「西の西陣、東の桐生」と伝えられるように、桐生織は奈良時代から続く1000年以上の歴史があります。戦国時代には徳川家康が「桐生織」を軍旗として掲げて関ヶ原の戦いに勝利し、縁起の良い織物として栄えました。
明治になるとジャカード機など当時の最先端技術をいち早く導入し、近代的な生産体制を確立することによって、世界でも指折りの織物産地に成長しました。
桐生織には7つの織り技法があることが特徴です。お召織(おめしおり)・経錦織(たてにしきおり)・緯錦織(よこにしきおり)・風通織(ふうつうおり)・浮経織(うきたており)・経絣紋織(たてかすりもんおり)・綟り織(もじりおり)があります。
<切嵌め(きりばめ)>
パッチワークに似た手法で異なる小布を継ぎ合わせたり、置き重ねたりして模様、文様を構成する技法のことです。室町末期〜桃山時代に小袖(こそで)や胴服の模様付けとして流行し、当時渡来した高価な布地を効果的に使用しました。
現代ではきもの、羽織、帯などに応用されています。切嵌め模様、切嵌め小紋と呼ぶものは、布地を実際に切り取らず、切嵌めの効果を染めで表現したものです。
<夾纈(きょうけち)>
同じ模様を彫った2枚の板の間に折り畳んだ布を固く挟んで、模様の部分に孔(あな)をあけて染料を注いで染める技法。
技法自体はシンプルですが、失敗する可能性が高く困難な技法のため、日本では平安以降、中国では明代の初めより多色のものは途絶えた幻の染色です。