着物は究極のサスティナブル衣服! 〜和裁士 平山留美さんに学ぶ。着物お仕立てのイロハ 其の1〜

みなさんは着物がどのように仕立てられているかご存じですか?
今回は<和裁士 平山留美さんに学ぶ。着物お仕立てのイロハ>として、「平山留美の きものサロン」代表である、和裁士 平山留美(ひらやま るみ)さんに「お仕立て」の目線から、着物の基礎知識を教えてもらい、着物の魅力について語っていただきました。
全4回のお誂えコラム。
其の1では着物がどんな構造をしているか、構造から見えてくる着物の魅力についてご紹介したいと思います。
【目次】
1.着物の構造ってどうなってるの?
2.解いていけば元通り!仕立て直しで出来ること
3.祖母から孫へ「着物が繋ぐ物語」
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1.着物の構造ってどうなってるの?
着物は一反 約12〜13mの反物からできているのですが、どのように裁断されて仕立てられているのでしょうか。
ミニチュアの模型を使用し、分かりやすく説明します。

このミニチュアが着ている着物も実際に平山さんに縫っていただきました。
分かりやすいよう、パーツごとに色分けされています。
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着物を解いて
パーツごとに見てみよう!
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着物を解いていくと、全部で8枚のパーツに分けることができます。

こうして見るとすごく「シンプルなつくり」だということが分かりますね。
現在では和裁士さんにお仕立てをしてもらうことがほとんどですが、
昔の人たちは「自分の着物は自分で縫う」のが当たり前でした。
自分自身の寸法を測って仕立てる。
そして生地が傷んでくると解き、傷みが分からないように仕立て直したり、羽織に仕立て直したりと大切に使われていました。
そういった点から見ても、シンプルな構造をしている着物は「誰でも仕立てることのできる身近なもの」だったと想像できますね。
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2.解いていけば元通り!仕立て直しで出来ること
着物を解いてみると曲線はなく、全て直線で裁断されていることが分かりました。
直線で裁断されているからこそ、着物を解くことで何度でも仕立て直すことが可能になります。
クリーニングする際は一度解いて、「端縫い(はぬい)」をして一反に戻してから洗い張りをします。
こちらが端縫いした反物です。

白い糸で繋ぎ目が縫い合わされているのが分かります。
洋服は立体的な構造(立体裁断)なので、一度裁断してしまうとサイズ変更はできません。
それに比べ、着物は平面的な構造だから元に戻すことができます。
一反に戻すことで、体型に変化があってもサイズ変更ができたり、生地の痛み箇所を隠したり、着物を羽織に変えたりと、同じものを長く、大事に、愛着を持って使うことができます。
また、染め直しや染め替えで新しく生まれ変わらせたりすることもできます。
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3.祖母から孫へ「着物が繋ぐ物語」
平山さんから「着物の魅力」を最大限に感じるお話を伺いました。
70代の女性が来店された際、「自分が二十歳くらいの時に着ていた付け下げを、もうすぐ生まれてくる孫のために仕立て直しをしたい」という相談を受けたそうです。
最初は「産着に仕立て直しましょう」という話になったそうですが、「せっかくなので産着だけではなく、七五三や十三詣り、二十歳になってからでも着られるように仕立て直しをしませんか?」という提案をされたそうです。
そしてお孫さんが生まれ、仕立て直した産着を着用しお宮参りに行かれました。
その後3歳の七五三。そして去年、7歳の七五三で着用されたそうです。
次は十三詣りと二十歳以降も着られるようにその都度、仕立て直しが行われます。
依頼者も大変喜ばれていたそうですが、平山さんもお孫さんの節目に携わることができ、着物の魅力を再認識したそうです。
依頼者さんに着用された時のお写真をお借りすることが出来ました。

【写真】左:七五三 3歳/右:七五三 7歳

【写真】七五三 7歳
こうして比べて見ると、柄の出てくる部分が違い、お孫さんの成長を感じることができますね!
「思い出の詰まった着物を世代を超えて共有できる」
着物だからこそ可能な「仕立て直し」技術の素晴らしさを伺うことができました!
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今回は「着物の構造と、構造がもたらす着物の魅力」についてご紹介しました。
洋服の立体裁断とは違い、着物は直線で裁断されているので、解いて何度でも仕立て直すことが出来ます。
昨今、自然環境や地球資源の枯渇に警鐘を鳴らす「サスティナビリティ(持続可能性)」という言葉をよく耳にしますが、着物こそ「究極のサスティナブル(持続可能な価値のある)衣服」です。
長い時を経ても、新しい価値へと甦らせることができる衣服が着物です。
読者の皆様も、お気に入りだけどサイズが合わない着物や、人から譲り受けた着物を是非お仕立て直しで甦らせてみてはいかがでしょうか。
次回は「寸法と仕立て」について教えていただきます!
「お誂えコラム」一覧はこちらから⇩
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▼プロフィール
平山留美のきものサロン代表
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平山 留美さん
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針を持って38年。
仕立てた着物は5000枚以上。
「お客様から顔が見える仕立て屋」をモットーに、縫って・着て・しゃべれる和裁士として活躍中。
神奈川県元住吉にて、「着物の全てを相談できる場所」を目指した「平山留美のきものサロン」を主宰し、浴衣講座や着付け教室・体験イベント・セレクトショップと熟練の和裁技術を軸に、和裁士の枠を超えた活動をされています。
〜認定資格〜
国家検定1級技能和裁士
東京都和裁技能士会理事
東京マイスター
ものづくりマイスター
▼監修
着物仕立 ひらやま
●住所:神奈川県川崎市中原区木月1丁目32号3
●電話:044-752-1629
●HP:https://www.hirayama-sitateya.com/
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▼STAFF
撮影:野中 真希
取材・文:キモノプラス編集部