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キモノ+小説 第1回『大原御幸』

キモノにプラスして着物を楽しむキモノプラス連載企画
今回のテーマは『キモノ+小説』です。

着物や帯が、物語の中に登場するのってワクワクしますよね!
着るのとは一味違うキモノの楽しみ方ができます!

第1回にご紹介する作品は小説家、エッセイストの林真理子さん作の『大原御幸』(講談社文庫)です。

https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000325086

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どんな作品?
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こちらの『大原御幸』、帯に生きた天才的染織図案家とその家族の人間ドラマが、リアリティ溢れる京都弁の語り口調で書かれているとても濃厚な作品です。

物語の主人公で、帯の図案家「松谷鏡花」のモデルは、実在する天才的染織図案家・若松華瑶氏。
着物黄金期の京都を舞台に、歌舞伎や能といった伝統芸能界から政界の著名人、花街の芸妓や舞妓からも慕われ、着物の歴史を語る上で欠かせない存在として活躍した伝説的な図案家・デザイナーです。

※若松華瑶氏を詳しく知りたい方はこちら↓
http://www.wakamatsu-kayou.co.jp/about.html

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 図案
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図案とは、「デザイン」のことで、帯作りの1番最初の重要な工程です。

図案家とは、現代で言うところの建築家やファッションデザイナーと同じような立ち位置でした。

特に着物や帯の柄のデザインでは、正倉院文様や有職文様など1000年以上前から受け継がれるオーセンティックな文様をベースに、その時代を投影したエッセンスを加えていくため、芸術に関する幅広い教養とセンスが必要と言われています。

左が図案、右が実際の帯ですが、
並べてみると、どちらが実際の帯か分からないほど忠実に図案が描かれています。

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リアリティ溢れるストーリー
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娘さんである二代目若松華瑶氏など、実在する人物へのインタビュー取材をもとに書かれた本作品では、戦前から戦後にかけての着物業界の栄枯盛衰や、産み出された帯や衣装の模様の美しさ、芸能界や花街での人間模様などが、懐古口調で語られています。

作中、実名で登場するメンバーにはなんと、伝統芸能界から藤間勘十郎、藤間紫、吾妻徳穂、市川猿之助、坂東玉三郎、木村庄之助、政界から東条英機、甘粕正彦など、驚くほどの豪華な著名人が名を連ねています!

当時の様子がありありと目に浮かぶ描写がいたるところで表現されており、読み進めていくと豪華で煌びやかな着物の世界に入っていくような感覚へ誘われます。

着物や帯を芸術の域まで高めた天才図案家の人生にスポットライトを当てた小説『大原御幸』。

着物の歴史の裏に隠された作り手の人間ドラマを楽しむには打って付けの作品です! 

■『大原御幸』(講談社文庫)
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000325086

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キモノ+小説 まとめページ
https://www.kimonoplus.com/hashtag/619/ja-JP/2