キモノ工芸辞典<あ>
<麻(あさ)>
夏の着物や着物の下着に適した素材で、ジャブジャブとお家で洗えるのでお手入れが楽ちんです。
麻を使った代表的な着物には、小千谷縮、近江縮、能登上布、越後上布、宮古上布、八重山上布などが挙げられます。
また、麻には「番手」と言われる重さの基準があり、番手の数字が大きくなればなるほど繊細な麻糸となります。
120番手の麻を使用した長襦袢は、麻とは思えないほど柔らかく、驚きの肌ざわりです。
<藍染(あいぞめ)>
藍染には主に天然灰汁発酵建、琉球藍、化学染料のインディゴで染めるものがあります。
日本古来より親しまれてきた藍染は、天然灰汁発酵建の藍染です。
「蓼(タデ)食う虫も好き好き」という言葉が表しているように蓼科の藍は防虫・防臭・殺菌効果、火にも強く、武士の下着や火消し半纏、お寺の掛け軸などにも使われていました。
太平洋戦争時、戦地での飢餓や伝染病に苦しむ中で、藍染の産地である徳島出身の兵士は藍染で染めた下着を吸って生き延びたというお話もあります。
タンスに一枚、藍染の着物が入っているだけで、防虫剤いらずです。
<茜染(あかねぞめ)>
日本国旗の日の丸色として染められている「茜染」は、漢方としても使われる茜の煎汁と灰汁によって染められます。
血行促進や保温、殺菌効果など、体に良い効能があることで古くから赤ちゃんの産着や腹巻、ふんどしなどに染められてきました。
着物では、主に絞り染めで柄付けをしているものが多く、岩手や秋田で染められています。
<阿波しじら織(あわしじらおり)>
単衣の木綿着物として気軽に着られる「阿波しじら織」。
凸凹としたシボが特徴で、汗をかいても生地が肌に張り付かず、さらりとした肌ざわりの着物です。
木綿なので家での洗濯が出来る、お手入れが楽ちんな着物です。
元々は阿波地方(現在の徳島県のあたり)で作られていた「たたえ織」という木綿縞に、女性染織家の海部ハナ(かいふはな)が改良を施して創ったものが「阿波しじら織」と言われています。
特徴的な凸凹のシボは、干した着物がにわか雨にぬれて乾いた時に生地が縮んだことから着想を得たというエピソードがあります。
<厚司織(あっとぅしおり)>
北海道の先住民、アイヌ民族の衣装である「厚司織(アットゥシ)」。
楡の木の一種であるオヒョウを代表する樹木の樹皮を繊維とした生地に木綿糸の刺繍で装飾をしています。
現在は北海道各地で工芸品として制作されていている厚司織(アットゥシ)ですが、2013年に沙流郡平取町二風谷で作られるものが北海道の工芸品としては初めて経済産業大臣指定伝統的工芸品に追加されました。
ざっくりとした自然布独特の風合いが持つ厚司織の帯などはカジュアルな着物のコーディネートアイテムとして活用出来ます。