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祇園甲部の芸妓・小芳さんに聞く 京都の花街と着物の楽しみ方(後編)

京都最大の花街・祇園甲部で芸妓として活躍する、小芳さん。
前編では、芸妓さんのお着物事情や、小芳さんの考える着物の魅力について伺いました。
後編では、これからの芸舞妓さんの世界と、時代とともに進化しつつある花街について、小芳さんに語っていただきました。

【SNSの登場によって変わりつつある芸舞妓さんの世界】

芸舞妓さんの世界といえば、華やかで謎に包まれているイメージを持つ人が多いでしょう。
その一方で、近年では、インスタグラムなどのSNSの登場によって、一般の人にとってより親しみやすい存在になってきているのではないかと小芳さん。

「外の人から花街がどういうふうに見えてるかはわからへんけど、最近はSNSがすごく普及してきたから、覗きやすくなったんちゃうかな、より身近に思ってはるんちゃうかなって思ってます。
芸妓さんとかには、オフィシャルアカウントを持って宣伝してはる方も多いです。舞妓さんは携帯を持ったらあかんけど、ハッシュタグつけて舞妓さんの名前を入れて調べると、その舞妓さんの写真がすぐに出てきますよ。それですごいファンが増えましたよね」。

インスタグラムなどのSNSによって、芸舞妓さんを多くの人が身近に感じられるようになる一方で、芸舞妓さんの世界独特の、謎めいていて神秘的なイメージが薄れるのではないかと思うところもあると話す小芳さん。

「お茶屋さんに行ったお客さんにしかわからへんっていうのも、なんか謎めいてて素敵やなって。私が中学生くらいの時に抱いてた芸舞妓さんのイメージって、やっぱりそれやので。親しみやすくなることで、芸舞妓さんに興味を持つ人が増えたり、誤解が解けるのはすごくいいと思うんですけど。芸舞妓さんって、ツンとしててこわいんちゃうかって勘違いされてることが多いけど、ほんまはすごく朗らかで気さくな人が多いんです」。

小芳さんは、“伝統文化”としての芸舞妓さんの在り方を大切にしていきたいと話します。

「長く通ってくれはるお客さんの中には、“伝統文化”としての芸舞妓さんを愛してくれてはる方が多くて、そういうお客さんはすごく嬉しいです。舞妓さんの頃から知ってくれたはって、『舞が上手になったなぁ』って声かけてくれはったり、私の方も『うちの妹どす』言うて、妹舞妓を連れて行って紹介したり。そういう過程ももちろん楽しんでほしいし、そういう仕組みは是非残っていってほしい。」。

【芸妓さんを呼んで着物女子会も歓迎!?小芳さんおすすめの花街の楽しみ方】

最後に小芳さんに、京都の花街にあまり接点がない人にもおすすめの、花街の楽しみ方について教えてもらいました。
最近では、花街のお店で芸舞妓さんを呼んで着物パーティーを開く人もいるとか(※新型コロナウイルスの流行前)。

「一般の方が花街に来て、お茶屋さんじゃなくても気軽に芸舞妓さんに会える居酒屋さんとかお料理屋さんが増えてきています。
例えばお着物が好きな女性の方々が集まって、芸舞妓さんを呼んで、『着物女子会』を開く方なんかもいはりますよ。あとは、SNSやインターネットで舞妓さんを見つけて、『この子可愛い』って言って、自分たちで名指しして呼んでくれはる方もいはります。
そんな風に、カジュアルなランチやディナーで気軽に親しんでもらえる存在になってきているんです。花街になじみがない方にもそういう風にぜひ活用もらえたら嬉しいです」。

芸舞妓さんと一緒に開催する『着物女子会』では、小芳さんも参考になるほどのおしゃれなコーディネートの女性も多いそう。

「皆さん着たいものを着たはるんですけど、カジュアルな着物をきたはる人が多いですね。それぞれが好きな着物を着て、自分好みにアレンジしたりして、すごい楽しそう。『こういう着方可愛いな』って思うような、勉強になるコーディネートの人も多いです」。

せっかく京都の花街に来るのなら、普段よりもワンランク上のコーディネートを楽しんでほしいと小芳さんは話します。

「レンタル着物屋さんもすごく増えてるし、けばけばしいお着物を選ぶよりも、落ち着いて華やかで、でも上品な、はんなりした着物を着てみてほしいなって思いますね。飲食店を通して芸舞妓さん会ったり、芸舞妓さんが出演するお舞台やイベントを見に行って、ぜひ花街の世界を覗いてみてくださいね」。

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華やかで非日常的なイメージのある芸舞妓さんの世界。古くから続く貴重な伝統文化であると同時に、最近では幅広い人が気軽に親しめる存在になってきているということが分かりました。
ぜひ、着物を着て、京都の花街の世界を体感してみてくださいね。
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【小芳(こよし)】
京都市山科区出身。京都最大の花街・祇園甲部で人気芸妓として活躍する。
小学校卒業後に置き屋に所属し、仕込み・見習い期間を経て2008年に舞妓デビューした。
2013年には、襟替えして芸妓に。プライベートでは、海外旅行や映画鑑賞が趣味。

※プロフィールは、2021年6月の取材時点での情報です。

▼STAFF
撮影:秀平琢磨 (UNPLUGGED)
編集・文:武尾香菜 (エディットプラス)