【インタビュー前編】「西村兄妹キモノ店」の西村MIZUHOさんに聞く! 普段着物を着ない人にこそ知ってほしい 着物の本当の魅力と、着物のこれから。

京都と東京の2拠点で、呉服店で生まれ育った兄妹が営む『西村兄妹キモノ店』。
着物をより多くの人に身近に感じてもらうことを目指して、カジュアルに着られて手入れも簡単な新感覚のキモノライン『~和 nagomi~』と、本格的で上質なキモノライン『~寿 kotohogi~』の2つのブランドを展開。
ほかにも、着付け教室など着物を身近にするためのさまざまな活動をされています。
今回は、そんな西村兄妹キモノ店の西村MIZUHOさんに、幼いころからずっと身近な存在である着物の魅力と、今後の着物業界について伺いました。
前編では、MIZUHOさんが考える着物の本当の魅力について、今のお仕事をされるようになった経緯を交えてお話ししてもらいました。
【日本を離れて初めて気づいた、着物文化の魅力】
京都で呉服店を営むご両親のもとで生まれ育ったMIZUHOさん。
物心ついたころから着物は身近な存在だったといいます。
「小さなころから着物は当たり前のように身近にある存在でした。自分では覚えていないのですが、幼少期は着物姿で自転車を乗り回していたそうです(笑)。着物は生活の中にあるごく身近な存在だったので、特に意識はしていませんでしたが、その頃から好きだったとは思います。」
そんなMIZUHOさんが着物の魅力に気付いたきっかけは、高校時代の一年間のイギリス留学にあったそう。
「日本を離れてみて初めて、いままで当たり前に感じていた日本文化や着物の素晴らしさに気が付いたんです。日本から着物を持って行っていたのですが、現地の方に着物を着た姿を見せるとすごく喜ばれて、着物って国境を越えてこんなにも受け入れられる存在なんだと驚き、嬉しかったのを覚えています。」
【きっかけは、「誰かを美しくしたい」という思いから】

高校卒業後、MIZUHOさんはメイクアップアーティストを目指して専門学校に入学します。
「”誰かをきれいにしたい”という気持ちが昔からあったので、高校卒業後はメイクアップアーティストを目指して専門学校に進みました。そこでも、自然と着物に関わることが多かったと思います。専門学校の卒業製作ではモデルさんにメイクをするのですが、衣装には着物を選んでいましたね。」
“誰かを綺麗にしたい”という思いと、自身のバックボーンである着物が重なったことで、MIZUHOさんは専門学校卒業後にご両親の呉服屋を手伝い始めます。
そこで、ある疑問を抱いたとか。
「両親の呉服店で働き始めてすぐに、着物がごく限られた人にしか手が届かない存在であるということを実感し、違和感を抱きました。当時の自分のような若い世代の人が気軽にファッション感覚で買えるような着物が、本当になかったんです。」
この時抱いた思いが、ブランドを立ち上げるきっかけになったと話すMIZUHOさん。
「ないなら自分で作ろう、と動き始めたことがブランドを立ち上げるきっかけとなりました。若い人が自分のお財布でも購入することができてお手入れも簡単なデニムや、洋服の生地を使ってキモノを作るために、いろんな生地産地に出向いて自分で交渉しに行きました。そういう活動をしていたころに、京都府のインキュベーション施策で京都の若いクリエイターやデザイナーを支援するプロジェクトがあり、そちらに公募し選んでいただいたことで西村兄妹キモノ店が始まりました。お店の場所は京都・烏丸御池にある商業施設 新風館でした。」
【着物の本当の価値は、着物を着ることによって得られる精神的な豊かさにある】
幼いころから着物が身近な存在で、現在も着物に携わるお仕事をされているMIZUHOさんにとって、着物は単なるファッションではないといいます。
「キモノは人を美しく見せてくれますし、ファッションとしての魅力ももちろん大きいです。でも、キモノを着ることの本当の価値は、キモノを着ることによって得られる経験や、精神的な豊かさにあると思います。キモノの時は歩幅が小さくなって、歩くペースも少しゆっくりになりますよね。そうすることで、いつもの景色が違って見えて、普段は気付かないことに気づいたりするんです。」
さらに、着物は“包む文化”なので、包まれている安心感が得られて、心が安らぐといいます。
「キモノを着るのは、洋服よりも手間も時間も掛かるけれど、そこに意味があると思っています。様々な過程を踏まえるからこそ見えてくるものがあるのです。私は、キモノは“目的”ではなく、一つの“ツール”であると捉えています。ただキモノを着ることがゴールではなくて、洋服にはない制限される動きの中で自然と所作が美しくなったり、キモノを着て出かけて感じたことを普段の生活にも活かしていくことでキモノ・和文化が身近になり、より豊かで美しい人生になる、そう思います。」
MIZUHOさんのお話を伺って、着物を着ることには、見た目が美しくなること以上の価値があるということが分かりました。
後編では、着物を着たときのおすすめの過ごし方や、現在されている活動、そして着物業界の今後についてお話ししてもらいます。
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(プロフィール)

プロフィール写真撮影:猪俣晃一朗
【#西村MIZUHO】
1981年生まれ。京都で呉服店を営む両親のもとに生まれ育つ。
イギリスへの留学とメイクアップアーティストとしての活動を経て、2004年に兄・ヒロカズ氏とともに京都・新風館で『西村兄妹キモノ店』を立ち上げる。
現在は、京都と東京を拠点に2つのキモノラインを展開。ほかにも、和文化の講座や着付け教室など、着物が身近になるための様々な活動を行う。プライベートでは一児の母でもある。
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▼STAFF
撮影:#秀平琢磨 (UNPLUGGED)
編集・文:#武尾香菜 (エディットプラス)