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【インタビュー後編】歌舞伎役者・中村芝歌蔵さんに聞く! 歌舞伎と着物の楽しみ方

歌舞伎役者・中村芝歌蔵さんに聞く「歌舞伎と着物の楽しみ方」。前編では、歌舞伎界のエピソード、初心者にオススメの歌舞伎見物のテクニックについてお話してもらいました。“敷居が高い”と思われがちな歌舞伎ですが「もっと身近な存在になってほしい」というのが、芝歌蔵さんをはじめ多くの役者の願いなのだそうです。今回は、歌舞伎見物の服装の話。「着物を着て歌舞伎を見に行きたい!」という人も、参考にしてくださいね。

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歌舞伎見物の装いにNGはない!?
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歌舞伎座の前を通りかかると、着物をはじめすてきな装いの見物客を多く見かけますよね。それを見て「やっぱり、歌舞伎を見に行くのはハードルが高いかも…」と感じてしまったことのある人もいるのではないでしょうか。日本の伝統芸能である歌舞伎鑑賞には、やはりフォーマルな装いがマストなのでしょうか?

「歌舞伎見物の装いに、ルールはありません! 普段着で全然OK、デニムでもいいんですよ。僕が見に行く時はデニムだし、楽屋でもみんなデニムです(笑)」

もちろん、せっかくの歌舞伎見物ですからお気に入りの装いで楽しみたいというのもアリ。けれど、歌舞伎の公演は、だいたい4時間程度。着慣れない洋服や靴で鑑賞すると、気分が悪くなったり内容に集中できなかったりすることもあるでしょう。

「日本の伝統芸能だからこそ、気軽に見に来られるものであるべきなんです。外国人観光客はTシャツにデニム、スニーカーで見に来ますよ。カジュアルでも全く問題ないので、安心して見に来てください!」

※『南総里見八犬伝』の左母二郎役

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着物で鑑賞も大歓迎! 気を付けたいのは…
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歌舞伎見物の服装に、決まりはありません。普段着でも着飾っても、好きな装いでOK。中には、着物を着て見に行きたいという人もいるのではないでしょうか。

「今の時代普段から着物を着る機会って少ないですから、着物で見に来るのもすてきですよね。着物の柄や格を気にする人もいるようですが、これも特に決まりがあるわけではありません。買ったばかりの着物、お気に入りの着物、お母さんやお祖母さんから受け継いだ着物、夏なら浴衣でもいいでしょう」

けれど、1点だけ気を付けてほしいことがあるそう。

「女性の場合は美容室などで着せてもらうことが多いと思うんですが、男性は自己流で着る人が多いのでしょうか…帯がめちゃくちゃな人が意外と多いんです。特に、男性の浴衣の帯結びは気になることが多いですね。せっかく着るのであればちゃんと着た方がいい。着付けができない人は、着せてもらった方がキマりますよ」

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歌舞伎役者の着付けはプロ級?
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最近では習い事としても人気のある“着付け”ですが、多くの人が難しいと感じるのがその帯の結び方。歌舞伎研修生時代から着物を着て講義を受けていたため、役者デビューする頃には既に着付けは体に染みついていたという芝歌蔵さんですが、やはり帯結びには苦戦したようです。

「僕も、最初は難しいと感じました。それと、大阪が舞台の上方歌舞伎では手の向きも帯の巻き方も逆の『関西手』という方法で着付けを行います。江戸歌舞伎では手先が右側に来るのですが、上方歌舞伎では手先が左側。これは、今でも戸惑うことがあります(笑)」

けれど一度、習得して何度も結んでいるうちに体が自然と覚えてくれると教えてくれた芝歌蔵さん。

「師匠は弟子と衣装さんの二人で着付けを行い、中には5~6人がかりで着せる衣装もあります。けれど、衣装さんは楽屋に一人だけ。僕たち大部屋の役者は、基本的には自分で着ることがほとんどです。だからといって、全ての着物を着られるというわけではありません。帯に関しては、自分で結ぶのは貝の口結び・箱結びくらい。特殊な衣装や帯結びのときは着せてもらいます。帯結びはいろいろバリエーションがありますが、1パターン習得しているだけでも十分ですよ」

※スーパー歌舞伎『オグリ』の阿星時定役

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歌舞伎はカジュアルに楽しめるもの!
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歌舞伎に対して敷居の高さを感じる人も多いようですが、服装に決まりはなく鑑賞の仕方にもいろいろな方法があることが分かりました。「歌舞伎が、より多くの人の日常に溶け込んでほしい」という、歌舞伎への愛を感じる芝歌蔵さんのお話。実は、プライベートではほとんど着物を着ることがないそうですが「僕も、今年の夏は浴衣でお祭りに行こうかな」と話してくれました。歌舞伎をまだ見たことがないという人、着物を着る機会がなかなかないという人もぜひ一度、歌舞伎の舞台に足を運んでみてくださいね。