【群馬県・富岡製糸場】養蚕だけじゃない!日本初の官営模範工場で学ぶ。後編

<富岡製糸場>は2014年6月に日本で18件目の世界遺産として正式登録されました。「富岡製糸場と絹産業遺産群」として周辺に点在する養蚕(ようさん)関連の文化財を含めての登録。
絹産業の技術革新に大きく貢献し、いまや日本だけでなく世界的に見ても大変貴重な遺産となりました。
前編では、世界遺産である<富岡製糸場>誕生の理由と国宝に指定されている3つの建物をご紹介しました。
後編では重要文化財に指定されている建物や養蚕についてご紹介していきます!
前編はこちら⇩
URL:https://www.kimonoplus.com/columns/900/lang/ja-JP/8
【目次】
1.<富岡製糸場>の重要文化財
2.そもそも蚕ってどんな生き物なの?
3.置繭所(おきまゆじょ)2棟より紐解く<富岡製糸場>の歴史
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1.<富岡製糸場>の重要文化財
<富岡製糸場>には重要文化財に指定されている建造物が6つあります。
その中から3つの建物をご紹介します。
全て1873年(明治6年)に建てられたものです。
◆女工館(じょこうかん)

画像提供:富岡市
こちらは日本人の工女(こうじょ)に器械製糸技術を教えるために雇われたフランス人女性教師 4名の住居として建設されました。
2階 ベランダの天井には板が格子状に組まれ、当時の日本建築にはない特徴が見られます。
◆検査人館(けんさにんかん)

生糸の検査などを担当したフランス人男性技術者の住居として建設されました。
見学は外観のみですが、2階には皇族や政府の役人が訪れた際に使用された「貴賓室」があり、大理石製のマントルピース(暖炉の焚き口の上部、周辺に設けられる装飾)は、ほぼ当時の状態で残されているそうです。
◆首長館(しゅちょうかん) /ブリュナ館

こちらは明治政府に指導者として雇われたフランス人 ポール・ブリュナが家族4人で住んでいた住居です。
後に建物は、宿舎や工女に読み書きや裁縫などを教える学校として利用されました。企業内教育の先駆けといえますね。
これらの3つの重要文化財は外観のみの見学となります。
建築には日本の技術だけでなく西洋の技術も取り入れられており、前編でご紹介した国宝である東置繭所・西置繭所・繰糸所も含め、政府が推進した産業近代化を感じることができます。
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2.そもそも蚕ってどんな生き物なの?
蚕は蝶や蛾の仲間で、桑の葉を食べます。
人の手が加わっていないと生きていけない「家畜化された昆虫」で、数えるときは1頭、2頭と数えます。
体が白いので外にいると捕食され、葉から落ちたら戻れず、雨が降るだけでも死んでしまいます。なので野外には生息していません。
江戸時代頃までは飛べたそうですが、糸をたくさん吐き出させる改良がされ、羽より体の方が大きくなり飛ぶことはできなくなりました。

◆蚕の一生
蚕の卵(蚕種/さんしゅ)から孵化し、脱皮を4回繰り返します。
孵化からおよそ28日で、繭を作り始める営繭(えいけん)といわれる段階に入ります。
繭の中で幼虫は蛹(さなぎ)になり、成虫になる準備をします。
生糸にする場合は、この蛹の段階(蛹化/ようか)で乾燥させます。
卵を産ませる場合は羽化させます。
卵から孵化し産卵するまでおよそ一ヶ月半と短い期間です。
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3.置繭所(おきまゆじょ)2棟より紐解く<富岡製糸場>の歴史
東置繭所・西置繭所で公開されている展示品のほんの一部をご紹介します。
全てをお見せする事ができないほど見応えたっぷりです!
こちらは西置繭所の1階にあるギャラリーです。

昔、製糸工場で使われていた物や資料などが展示されています。
工女が着ていた歴代の制服のミニチュアのレプリカも飾られています。

袴だけでなく、ワンピースなど洋服の制服もあったんですね!
こちらは東置繭所の2階です。

建物は南北に長く104.4メートルあり、倉庫にしては窓がたくさん付いているのが特徴です。
原料繭の乾燥技術が発達するまでは、生乾きの状態で繭を2階に貯蔵し、天気の良い日に窓を開けて風を通し乾燥させていました。
乾燥技術が進んでからは、乾繭(かんけん)を袋詰めにして、2階内部に設けられていたトタン製の貯繭室(ちょけんしつ)で保管していました。

画像:西置繭所 2階
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群馬県を訪れた際は絶対に外せない!
一生に一度は行きたいスポット<富岡製糸場>を前編・後編に分けてご紹介しましたが いかがでしたか?
とても広く見応えたっぷりの施設内を、解説員の方に詳しいお話を伺いながら見学させていただきました。皆さんも<富岡製糸場>に行かれる際は是非、ガイドツアーに参加し話を聞きながら見学してみてください。
養蚕のことだけではなく、時代背景や生活など暮らしぶりも学ぶことができます。
とても楽しく勉強になりますよ!
そして周辺には観光スポットがたくさんあるので、富岡市を満喫できること間違いなしです!

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富岡製糸場
●住所:群馬県富岡市富岡1-1
●電話(場内総合案内所):0274-67-0075
●開場時間:9:00〜17:00(最終入場16:30まで)
●休場日:年末(12月29日〜12月31日)
●見学料:大人 1,000円/高校・大学生(要学生証) 250円/小・中学生 150円
●オプション料金:ガイドツアー参加(解説員による解説) 大人 200円/中学生以下 100円
●団体オプション料金:解説員 1名あたり 3,000円
●HP:http://www.tomioka-silk.jp/tomioka-silk-mill/
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撮影協力:富岡市・富岡製糸場
※いずれも消費税込み
※データは2021年11月時点での情報です。
最新の情報は施設にお問い合わせください。
▼STAFF
モデル:桜井 あやこ(アウグストゥス)
撮影:岩嵜一真
取材・文:キモノプラス編集部