衣替え時のお手入れルーティン
「暑くなってきたな」「そろそろ肌寒いな」と、季節の変わり目を感じたら衣替えの時期。袷から単衣へ、単衣から袷へと切り替わる頃にやっておきたいことを、着物メンテナンスのプロ「きもの工房 扇屋」家田貴之さんに教わりました。どれもひとつひとつはとても簡単! お気に入りの着物たちをカビや虫から守るためにも、お手入れルーティンを覚えておきましょう。
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お手入れルーティン①
よく着た着物の汗ジミチェック
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泥ハネや食べこぼしなどは、見た目にすぐわかるので気づきやすいのですが、見過ごしやすいのが汗ジミ。時間が経過してからじんわりと黄色く変色してくるので、「久しぶりに袖を通したらなんだか汗ジミが……」と、時間差で発覚することが多いのです。

衣替えのとき、そのシーズンでよく袖を通した着物は、冬でも汗を吸収している可能性が大。とくに汗をかきやすい袖付けと衿の間あたりの胴裏は要チェックです。
汗ジミチェックのコツは、胴裏の生地を傾けて見ること。家田さん曰く「絹は経糸と緯糸の布目が整っていることで美しい光沢が出ます。汗をかくとほんの少し布が縮んだりするので、汗をかいていない部分と比べると布目に変化が起こっています。生地を斜めにすると、光沢の質感が汗をかいた部分だけ少しマットになっているので、わかりやすいと思います」。
汗ジミチェックをするときは、昼間の自然光で見るのもポイントです。
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お手入れルーティン②
よく着た着物の袂の中をチェック
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「意外と知られていないのが、袂の中にホコリやゴミが溜まりやすいことなんです」と、家田さん。袂の中には、ホコリやゴミが溜まりやすく、そのままにしておくと、虫が卵を産み付ける原因になることもあるそう。

袖をひっくり返して、袂の隅に溜まったホコリやゴミを捨てます。ブラシなどで掻き出してもOK。
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お手入れルーティン③
着用頻度が少ない着物ほど虫干しを!
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虫干しとは、着物を着物ハンガーなどに吊るして風を通し、湿気を取ること。「頻繁に着ている着物よりも、着用頻度が少ない着物ほど虫干しが必要です。ずっと仕舞いっぱなしだと、どんどん湿気が溜まってカビが増殖しやすくなります」と家田さん。
衣替えをするときには、そのシーズンあまり袖を通さなかったものも、そのまま仕舞わず、直射日光や照明の光を避けて風通しの良いところで1日吊るしてから仕舞いましょう。着物は、屋内の蛍光灯でもヤケてしまうことがあるので、注意が必要です。
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目立つシミや汚れを発見したら
お手入れのプロに相談しよう
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汗ジミが気になったものや、汗をたくさんかく夏物は、シーズン終わりに「汗洗い」をプロにお願いするのがおすすめ。お店によって金額はまちまちですが、扇屋さんの場合、超音波で汗を叩き出す「汗洗い」は1ヶ所2,000円〜。「『汗洗い』や『汗抜き』といっても、お店によって作業内容が異なる場合があるので、そのお店でどういう作業をするのか聞いてみるのが良いと思います」と家田さん。

また、着ているときには気がつかなくとも、衣替え時にあらためてチェックをしていると「あれ? こんなところにシミが……」と、思わぬところに汚れを発見してしまうことも。
目立つところのシミや汚れが気になったら、早めにお手入れのプロに相談するのが◎。食べこぼしのシミやカビなどは、時間が経過すればするほど、落ちにくくなってしまいます。
すっきり、さっぱりとメンテナンスをしておけば、次のシーズンに気持ちよく袖を通すことができます。
▼教わったお店
きもの工房 扇屋
染み抜き・洗い張り等の修復やメンテナンスを専門とする老舗悉皆店。1999年より「着物染み抜き教室」も開催し、多くの着物ユーザーに支持を集めている。
東京都中央区湊3-4-5 平田湊ビル3F
TEL:03-6280-4788
https://ougiya.tv/
▼STAFF
撮影:池ノ谷侑花(ゆかい)
編集・文:小西七重