汚れた半衿を自分で洗おう!
ファンデーションや皮脂汚れが気になる半衿。とはいえ、正絹のデリケートなものは縮みが気になって手洗いするのも躊躇してしまいます。「ベンジンを使って、生地を傷めにくい洗い方を覚えれば、自宅でも簡単に洗えますよ」と、着物メンテナンスのプロ「きもの工房 扇屋」家田貴之さん。正絹半衿の洗い方に加え、汚れを効率的に落とすポリエステル半衿の洗い方のコツも教わりました。
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デリケートな正絹半衿の洗い方
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今回紹介するベンジンを使った洗い方は、デリケートで水に縮みやすい正絹の縮緬や刺繍半衿におすすめ。ベンジンは石油と同じ揮発性溶剤で、常温で気化し、気化した状態で火気を近づけると引火の可能性があります。使用する際は火気厳禁かつ、十分な換気を行うことが重要です。

【用意するもの】
A:さらし2枚(タオルでも代用可能)
B:ベンジンを入れるガラスか陶器の器(お猪口やスフレ皿など、底が安定しているもの)
C:巻き棒(反物やラップの芯などでOK)
D:馬毛のブラシ
E:ベンジン
【正絹半衿の洗い方】

【1】サラシを敷いた上に半衿を置く。半衿の上下を巻き棒に巻きつける。ベンジンは器に入れて、巻き棒を抑える手よりも奥に置いておく。手前に置くと、洗うときに手や肘があたってしまい、器を倒してしまうことがあるので要注意。

【2】下側の巻き棒をお腹と机の間に挟んで固定し、上側の巻き棒は片手で抑える。
【3】ベンジンを入れた器を、蓋をするように畳んださらしで抑え、器を左右に振って、さらしにベンジンを含ませる。

【4】ベンジンを含ませたさらしで、半衿を湿らせる。このとき、ムラなく湿らせることが輪ジミを防ぐコツ。
【5】半襟を湿らせたら、ベンジンを含んだブラシを上下に素早く動かし、汚れを落としていく。

【POINT|ブラシの使い方】器にブラシの先端を浸して持ち上げ、ベンジンが垂れなくなったらOK。紐が巻いてある部分のいちばん下を、鉛筆のように持ち、半衿に対して垂直にブラシをあてるのがポイント。

【6】再び、サラシにベンジンを含ませて全体を湿らせ、洗い終えた部分を上部の巻棒に巻き上げる。【3】〜【6】を半衿をすべて巻き終わるまで繰り返す。
【7】最後まで巻き終えたら、乾かして完了。

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ポリエステル半衿、部分洗いのコツ
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水でジャブジャブ洗えるポリエステルの半衿。でも、頑固な皮脂汚れや、ファンデーションは、すんなり落ちてくれません。「汚れを落とすには、洗剤の濃度と順番が重要なんです。水で濡らしてから洗剤を使うより、乾いた状態で洗剤をつけて洗うほうが効率が良いんですよ」と、家田さん。
【ポリエステル半衿の洗い方】

【1】中性洗剤と水を1:1で薄める。
【2】半衿(乾いた状態)の落としたい汚れの部分に、歯ブラシなどでトントンと洗剤をつける。このとき、こすらないように注意。

【3】全体を水で洗い、乾かして完了。
固形石鹸でゴシゴシこすったりしなくても、こんなにスッキリ汚れが落ちるなんて! ちょっとしたコツで半衿洗いはぐんとラクになります。
▼教わったお店
きもの工房 扇屋
染み抜き・洗い張り等の修復やメンテナンスを専門とする老舗悉皆店。1999年より「着物染み抜き教室」も開催し、多くの着物ユーザーに支持を集めている。
東京都中央区湊3-4-5 平田湊ビル3F
TEL:03-6280-4788
https://ougiya.tv/
▼STAFF
撮影:池ノ谷侑花(ゆかい)
編集・文:小西七重