湿気から着物を守る! 収納のヒント
衣替えの季節。久しぶりの着物に袖を通そうと、畳紙をあけてみると「あれ? なんだか黄色や白いシミがポツポツ。まさか……カビ!?」なんて経験ありませんか?
そう、湿気は着物の大敵。着物を守る収納のヒントを、着物メンテナンスのプロ「きもの工房 扇屋」家田貴之さんに教わりました。
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収納のヒント①
変色した畳紙は今すぐ取り替えよう
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母や祖母から譲り受けた、畳紙に包まれた着物。それをそのまま保管していませんか? 長年の湿気を含み、カビによって変色した畳紙に着物を入れていると、カビが畳紙から着物に移ってしまいます。
「変色した畳紙は、すぐにでも新しい畳紙に変えたほうが良いです。畳紙の良し悪しではなく、虫干しもせず、着ることもせず、同じ畳紙に何年も入れっぱなしの状態がいちばん良くありません」と、家田さん。
畳紙の利点はふたつ。ひとつは、着物を出し入れする際にシワにならないこと。もうひとつは湿気を吸収してくれることです。「衣装ケースに収納する場合、畳紙を使わないとビニール袋に着物を入れているのと同じで、湿度が高くなっても湿気を吸収してくれません。畳紙を使ったほうが、湿気対策になると思います」。
畳紙に入れると、着物の中身が見えないので「あの着物どれだっけ……」と衣装ケースをひっくり返すこともしばしば。畳紙の表に、着物の特徴を書いたマスキングテープやラベルを貼っておくと、着物を選ぶときに便利です。

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収納のヒント②
除湿剤・除湿機を上手に使おう
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湿気は低いところに溜まりやすいため、ベッド下の収納は要注意。また、クローゼットも床に近いところはなるべく避けたほうがベター。「新しい着物でも、条件さえ整えば、数ヶ月でカビが広がることがあります。梅雨時期や湿気が溜まりやすい家なら、しっかりとした除湿機を使うことを推奨します」。
何よりも重要なのは、湿度を下げること。湿度が50%ほどに保たれていれば安心ですが、70〜80%になると、いつカビが大増殖してもおかしくない危険な状態なのだとか。気温と違い、湿度は体感しずらいので、クローゼットに湿度計を置いておくのも良さそうです。

クローゼットが狭くて除湿機を置くスペースがない……という場合には、天日干しで繰り返し使える除湿シートと衣装ケースに敷いておくのも◎。また、「衣装ケースの中にすのこを敷いて、その上に着物を収納すると、湿気がたまりやすい底面に着物が触れないのでおすすめです」と家田さん。
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収納のヒント③
防虫剤の使い方には注意が必要!?
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湿気も気になるけれど、着物を虫に食べられるのも防ぎたいところ。ついつい、防虫剤をたっぷり使ってしまいがちですが「防虫剤は殺虫効果のあるガスが広がるので、正しく使うことが大切です」と家田さん。
さて、正しい使い方とは……?「ニオイがついている防虫剤を複数一緒に使うと、それぞれのガスが混ざって化学反応がおき、金が溶けたり、サビが出たりと、トラブルが起きやすいんです。どうしても防虫剤を使いたい場合は、1種類を使い続けるのが良いでしょう。気化したガスがタンスに充満するので、今使っている防虫剤がなくなっても、タンスにはまだガスが残っている状態です。そこで新たに、違う種類の防虫剤を使うと、タンスの中で2種類のガスが混ざってしまうことになります」。ちなみに、ニオイのない防虫剤は異なる種類を混ぜて使っても問題ないのだそう。
ニオイのあり・なしに関わらず、注意をしたいのは衣替えのとき。タンスに充満したガスが室内に広がるので、窓をあけて換気をしながら行うことを忘れずに。
▼教わったお店
きもの工房 扇屋
染み抜き・洗い張り等の修復やメンテナンスを専門とする老舗悉皆店。1999年より「着物染み抜き教室」も開催し、多くの着物ユーザーに支持を集めている。
東京都中央区湊3-4-5 平田湊ビル3F
TEL:03-6280-4788
https://ougiya.tv/
▼STAFF
撮影:池ノ谷侑花(ゆかい)
編集・文:小西七重