〈着物を学ぶ〉知ればもっと好きになる、加賀友禅の引力。

江戸時代、加賀百万石とたたえられて栄えた金沢には、武家文化によって培われた金沢箔や金沢漆器・九谷焼など、さまざまな伝統工芸がいまも息づいています。
その中でも、ひときわ艶やかなのが加賀友禅です。
独特の美しいぼかしや虫喰いの技法は、一流の職人の手から手へと継承され今日に至っており、なんとも言えない風格があります。着物ファンなら、一度は着てみたい憧れの着物ですよね。

今回は、兼六園からほど近い金沢市小将町にある「加賀友禅会館」で、加賀友禅の歴史や独特の技法について学んでみました。
【目次】
1.江戸時代から脈々と受け継がれている、加賀友禅の原点を探る
2.知っているようで知らなかった、京友禅と加賀友禅の特徴や違いは?
3.加賀友禅ができあがるまでの工程を見てみよう
4.職人気分で、初めての加賀友禅染めを体験!
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1.江戸時代から脈々と受け継がれている、
加賀友禅の原点を探る
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加賀地方には今からおよそ500年前、すでに梅染めと言われる無地染がありました。
しかし、江戸時代になって京都の町で人気の扇絵師であった宮崎友禅斎(みやざきゆうぜんさい)が、加賀染め(かがぞめ)という模様染め(もようぞめ)を改良し、新しい友禅画風が加わって、今日の加賀友禅の基礎ができたと言われています。
友禅斎はその後も、斬新なデザインを次々と創案し、その傑出した能力で友禅糊の技術を定着させるなど、加賀友禅の発展に大きく寄与しました。
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2.知っているようで知らなかった、
京友禅と加賀友禅の特徴や違いは?
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京友禅と加賀友禅は、ともに宮崎友禅斎によって基礎が作られましたが、時代の変遷とともにそれぞれの地域ならではの特徴が生まれました。
加賀友禅は武家社会に、京友禅は公家や町人文化によって支えられたことによると考えられます。


加賀友禅の図柄は、写実的な草花模様を中心とした絵画調が特徴で、色彩は五彩(藍・えんじ・黄土・草・古代紫)を基調とする暖色系が多いのに対して、京友禅は淡青単彩調の図案風模様が主となっています。
手のこんだ「ぼかし」や「虫喰い」の技法が多く使われることや、本染めのあとに箔や刺繍等による加工がほとんどないことも加賀友禅の大きな特徴のひとつです。

その繊細な作業の一つひとつがまさに息を呑む光景であり、根気と時間をかけて仕上げられるがゆえの高い価値を誇っているのです。
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3.加賀友禅ができあがるまでの工程を見てみよう
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加賀友禅が完成するまでには主な工程だけでも9つあり、そのすべての過程で熟練した技術が求められます。
加賀友禅会館の1階にはそれらを初心者でもわかりやすく説明したパネルが展示されており、様々な工程を経て完成していく様子や職人が使っている道具を見ることができます。
〈加賀友禅の工程〉
1.図案作成
2.仮仕立て(仮縫い)
3.下絵(ツユ草科の青花を絞った汁を染み込ませ乾燥させた青花紙を水で戻し図案を写す)
4.糸目糊置き(青花の線に沿って糊を引いていく)
5.地入れ(豆汁を生地の裏から刷毛で塗り、糊を生地に食い込ませる)
6.彩色
7.下蒸し(蒸し室に入れて色を定着させる)
8.中埋め(彩色したところを糊で埋めていく)
9.地染め
10.本蒸し(蒸し室で蒸気に当てて色を定着させる)
11.水流(一般的に友禅流しと呼ばれ、水洗いして糊など余分な染料を落とす)
12.湯のし(蒸気でシワを伸ばしたり反物の幅を整える)
13.仕上げ

加賀友禅では、模様の輪郭をなす防線のための「糸目糊」が最大の特徴であり、美しさの生命線とも言えます。技術を身につけるには修行と長年の経験が必要です。

その糊や生地についている余分な染料を洗い流す作業が、金沢の冬の風物詩とされてきた犀川や浅野川での友禅流しです。川の水が冷たいほど繊維が締まり、思ったとおりの色に染め上げることができるそうで、昔は凍りつくような寒中に行われていました。
現在では、主に加賀友禅染色組合の人工の川で行われているそうです。
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4.職人気分で、初めての加賀友禅染めを体験!
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加賀友禅会館の地下1階には、手作り体験コーナーがあります。
伝統的な五彩を使い、彩色やぼかしなど職人顔負けの作業が体験できると老若男女問わず人気です。
今回は、誰でも簡単にトライできる型染めに挑戦してみました!

まず、ハンカチやトートバッグ・ポーチなどから作りたいアイテムとモチーフを選びます。
あとは5枚の型を使って、順番に刷毛で布に色を刷り込んでいくだけ。
あっと言う間に、自分だけの加賀友禅アイテムができあがりました。ぼかしの部分はやはり難しくて、なかなか職人さんのようにはいかないけれど、それも愛嬌があっていいものです。
定番の草花をモチーフにした柄から、金沢らしい「ひゃくまんさん」をモチーフにした図柄もあって、若者に人気だそうですよ!
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展示や体験のほかに、こちらの施設では、加賀友禅をモチーフにした様々なアイテムも販売されています。

気軽に使えるハンカチやバッグ・Tシャツの他、現代風にアレンジされたこんな素敵な名刺入れも見つけました。おみやげにもぴったりですよね。
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今回は加賀友禅の伝統に触れられる加賀友禅会館をご紹介しました。
繊細な日本の心と、染めの心が絶えることなく脈々と息づいている加賀友禅。
ぜひあなたも金沢に来たら、体感してみてはいかが?
加賀友禅会館
●住所:石川県金沢市小将町8-8
●アクセス:兼六園下バス停から徒歩約3分
●電話:076-224-5511
●時間:9〜17時
●休み:水曜、年末年始
●入館料:大人310円、小人210円
●体験料金:手描き体験(ハンカチ)2,750円
型染め体験1,650円〜
●HP:http://www.kagayuzen.or.jp/
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[衣装協力]
着物レンタルあかり

「あかり」は、創業90余年を迎える加賀友禅の老舗呉服店が営む着物レンタルショップです。
金沢の台所と呼ばれる近江町市場内にあるので、観光の際に気軽に立ち寄れる立地も魅力のひとつ。
おしゃれ着物からメンズ着物・加賀友禅まで充実した品揃えと、着付けも含めたお手頃価格が自慢のお店です!
●住所:石川県金沢市下松原町49
●アクセス:バス停武蔵ヶ辻・近江町市場から徒歩約3分
●電話:076−201−8119
●時間:9〜18時
●休み:水曜
●料金:ベーシック着物プラン 2,970円
カップル着物プラン 7,370円〜
加賀友禅3時間パック22,000円
●HP:https://akari-kanazawa.jp/
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※データは2021年9月時点での情報です。
掲載している料金は原則として税込み価格です。
最新の情報は各スポットにお問合せください。
▼STAFF
撮影:山本さくら
モデル:ayaka
スタイリング・着付け:着物レンタル あかり
編集・文:村田麻美(CYAN)