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【インタビュー後編】 「西村兄妹キモノ店」の西村MIZUHOさんに聞く! 普段着物を着ない人にこそ知ってほしい着物の本当の魅力と、着物のこれから。

西村兄妹キモノ店の西村MIZUHOさんに聞く、着物の魅力と着物業界の今後。
前編では、MIZUHOさんが今のお仕事を始められるきっかけとなった出来事や、着物を着ることの意味についてお話ししてもらいました。

今回は、着物を着たときのおすすめの過ごし方や、現在されている活動、そして今後着物業界はどうなっていくのかということについて伺ってみました。

【なんでもない普通の日に、ただ着物を着るということ】

多くの人にとって「特別な日に着るもの」というイメージが強い着物ですが、MIZUHOさんは、なんにもない普通の日にこそ着物を着てみてほしいと話します。

「あまりキモノを着る機会がない人には、まずはなんにもない普通の日にキモノを着てみることをおすすめします。キモノを着て、特別なことをするわけでもなく、ただいつも通りの一日を過ごしてみてほしいですね。ひとりで家にいてもいいですし、仕事や学校に行ったり、買い物に出かけたり、本当に普通の日を送るんです。普段と同じことをしているからこそ、洋服とキモノの違いに気付きやすくなると思いますよ。」

【着物に親しむきっかけを、もっと多くの人に持ってもらいたい】

普段着物を着ない人にとって、「着物を着よう! 」と思うきっかけや機会って、なかなか少ないものです。MIZUHOさんはそこに着目して、より多くの人が着物に親しむきっかけを作るために、現在さまざまな活動を行っています。

「キモノを着る機会をもっと多くの人に持ってもらいたいという思いで始めた活動の一つが、“わのこと講座”の企画・開催です。わのこと講座では、茶道や和のお稽古ごと等の講座を、着物初心者の方に向けて開催することで、キモノを着るきっかけにしてもらっています。また、キモノだけでなく、和の文化にも親しんでもらいたいという思いで行っています。」

さらに、ブランドを立ち上げたばかりの頃は、なんと毎月無料で着付け教室を開催されていたそう。

「キモノを自分で着ることができるということが、最初のステップになると思ったからです。現在では月謝制になりましたが、着付け教室京都と東京で開催しています。」

【二極化しつつある着物業界の、これまでとこれから】

最後に、着物業界の今とこれからについて、MIZUHOさんに伺ってみました。

「着物業界は、二極化しつつあると思います。何人もの職人さんの手仕事を経て作られる本当にいいものと、そうじゃないものがはっきりと分かれてきているな、と。キモノが身近になるためには両方大切ですが、私としては、”本当にいいもの”は生き残ってほしいし、もっと多くの人に親しんでほしいです。そのために、着物に携わる人は、着物がもっと身近になるために工夫していかないといけないし、努力をしていかないといけない。また、生産をしている職人さんに、しっかりとお金が入るようなシステムを作っていくのも大切だと感じています。」

変化が迫られている、着物業界。世の中のデジタル化に伴い、着物業界でも少しずつデジタル化が進んでいるようです。

「着物業界のデジタル化に関しては、前向きに捉えています。例えば、インターネットを使ったオンライン販売では、海外の方にも手軽に着物を買っていただくことができます。また、着物のあつらえ(※既製品ではなく、注文して作られるオーダー品のこと。白生地を選び、好みの色柄に染めて作っていく)をする際に、iPadなどを使用して、ワンタッチで完成形が表示されるようになったら便利だなぁと思います。今はまだそういうものがないので、アナログな形でやっていますが、デジタル化が進めばもっと気軽にあつらえできるようになるのではないかなと。」

変化が目まぐるしい世の中で、時代を経て変わっていくものと、変わらずに残っていくもの。これからの着物の在り方についてMIZUHOさんは、着物の“形”を大切にしていきたいと話します。

「いろいろな考え方があると思いますが、私の場合は、素材は変えても、形は変えないということを意識しています。ですので、簡単に着られる二部式などもありますが、うちのブランドでは扱っていません。着付けをする動作から学べることがたくさんあって、それを大切にしていきたいと考えているからです。この考え方には、私のルーツが”呉服店”だということが大きく影響しています。例えば実家が友禅の染屋さんだったら、反対の考えになっていたかも。でも、呉服店に生まれ育った私は、用の美であるキモノの形を大切に守っていきたいですね。」

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特別な日以外は、着物を着ることに対してなかなか積極的になれない人も多いと思いますが、普段の生活に着物を取り入れることで、得られるものがたくさんあるということが分かりました。ぜひ、暮らしに着物を着る習慣を取り入れてみてください。また、美寿穂さんが開催されている、わのこと講座や着付け教室などのイベントについてもぜひチェックしてみてくださいね。

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プロフィール写真撮影:猪俣晃一朗

【西村MIZUHO】
1981年生まれ。京都で呉服店を営む両親のもとに生まれ育つ。
イギリスへの留学とメイクアップアーティストとしての活動を経て、2004年に兄・ヒロカズ氏とともに京都・新風館で『西村兄妹キモノ店』を立ち上げる。
現在は、京都と東京を拠点に2つのキモノラインを展開。ほかにも、和文化の講座や着付け教室など、着物が身近になるための様々な活動を行う。プライベートでは一児の母でもある。

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▼STAFF
撮影:秀平琢磨(UNPLUGGED)
編集・文:武尾香菜(エディットプラス)