紋様図鑑 vol.1橘(たちばな)
美しい自然を切り取った文様に、幸せを願う吉祥紋、
時にはダジャレを効かせた洒落紋など、
着物には数え切れないほどたくさんの文様を見つけることができます。
デザイン性の高さはもちろんのこと、
その文様に込められた意味を知ると着物はもっと面白くなるはず!
「文様図鑑」では毎回、着物や帯から素敵な文様を紹介します。
第一回目はぽってりとした形が愛らしい「橘」文様です。

※写真は振袖の一部。橘中に鹿の子紋様が描かれています。

「左近の桜、右近の橘」の言葉の通り、京都御所の「紫宸殿(ししんでん)」にも植えられ
た橘は日本で古くから愛されてきた植物です。
橘とは蜜柑などの柑橘類を指す古名ですが、
文様として描かれる橘は写真のように実と葉を意匠化して描いたものがほとんどです。

※写真は訪問着の一部。広げた扇の中に梅などと一緒に橘が描かれています。
「橘」は不老不死の理想郷である「常世(とこよ)の国の果樹」と言い伝えられ、長寿や子孫
繁栄を願う吉祥紋として愛されてきました。
そのことから婚礼衣装や晴れの日に着る礼装によく見られる文様です。